2013年10月26日土曜日

Ariana Grande『Yours Truly』(2013)

「ヤング・マライア」とも称される若手シンガー、アリアナ・グランデのデビュー・アルバムを今回は取り上げましょう。

現在20歳の彼女、もともとはミュージカルがきっかけでショウビズの世界に入ったようです。その時、なんと14歳! 子役として若い時から活躍していたんですね。

そんな彼女、ヴィジュアル的にはマライアほどゴージャスではなく、どちらかと言えば可憐な感じがしますよね。だから、実は彼女の曲がヒットチャートに名を連ねた時はまったく意識していなかったのです・・・新たなアメリカン・アイドルが登場したぐらいにしか思ってなかったので。

でも、聞いてみるとR&Bだし、実はかなりの本格派だった! 曲はキャッチーだけど、歌はしっかりしているではないの。

ということで、意外さと新鮮さを持ってこのアルバムを聞くことになったのですが、 内容も充実していました!さっそくレビューに移りましょう。


(1)Honeymoon Avenue
このアルバムのスゴイところは、ベイビーフェイス一派がプロデューサーとして参加していることでしょう。とにかく、手堅いです! そしてきちんとアリアナちゃんの魅力を引き出す音作りになっています。このオープニングトラックでは、ゴージャスなストリングスに軽快なリズム、そしてコケティッシュな歌声が響き渡り、掴みはOKという感じですね。

(2)Baby I
アルバムからのセカンド・シングル。こちらも軽快なビートで、早口にハイトーンにと多彩なヴォーカルを披露しています。ラストではかなり高い声を出してますが、そこら辺がマライアと比較される所なのだと思います。サウンド的には90年代を意識しつつ、さまざまな要素が盛り込まれた仕上がりですね。こちらも童顔氏作。
(3)Right There feat. Big Sean
のっけからハイトーンボイスが炸裂。そして、ビッグ・ショーンを迎えてストリート感も演出したアップテンポな一曲。ファンテイジアの新作でも手腕を発揮したハーモニー・サミュエルズがプロデュースしています(彼はエグゼクティブにも名を連ねていますね)。

(4)Tattooed Heart
ここで一度スローダウン。映画の一コマで使われそうな、ピアノとコーラス、フィンガースナップが主軸となったシンプルなバラード。ムードのある一曲を、堂々と歌い上げるアリアナちゃん、さすがのミュージカル仕込み。

(5)Lovin' It
これぞ、90年代フレイバーな一曲でしょう。メアリー・J.ブライジのクラシック「Real Love」を引用し、あのハネるビートを現代風にアレンジ。彼女らしい若々しいサウンドに仕上がっています。

(6)Piano
タイトル通り、ピアノの音から始まり、クラップを交えて非常にポップな展開へと至る一曲。こちらも若々しくて、これはマライアには決して歌えないでしょう。

(7)Daydreamin'
カバーじゃなくてオリジナルですね。ハネるピアノの音とアリアナちゃんと麗しい声がタイトルに相応しいと思わせてくれます。

(8)The Way feat. Mac Miller
大ヒットしたリード曲。マック・ミラーがラップで参加し、両者にとって初の全米トップ10に食い込む記録を残しています。ブレンダ・ラッセルの「A Little Bit of Love」を大胆にサンプリングして、ピアノ主体のアップテンポな一曲に仕上がっています。
(9)You'll Never Know
アップテンポなポップR&B。可もなく不可もなくだけど、アルバムの一要素として必要・・・みたいな感じかもしれないですね。そして、ベイビーフェイス関与曲です。ヴォーカル・プロダクションがかなりマライアを意識したつくりになっています。

(10)Almost Is Never Enough feat. Nathan Sykes from The Wanted
この二人、どうやら付き合っているらしいじゃないのw ということで、アツアツな二人の濃厚なデュエットをそうぞ。ちなみに、ザ・ウォンテッドはUK発のボーイズグループで、ネイサン・サイクスはその一員だそうです。
(11)Popular Song with Mika
シンガーソングライター、ミーカとのデュエット。もともと彼の『The Origin of Love』というアルバムに収録されていた曲で、シングルカットするにあたってリミックスし、そこで新たにアリアナちゃんをフィーチャーしたとのこと。曲は王道とも言えるポップスで、カッティングギターが小気味良いのだけど、アルバムの中では明らかに一曲だけ浮いている・・・収録する意味があったのかどうか。
(12)Better Left Unsaid
最後は、まさかまさかのEDM。そして、これもハーモニーがプロデュースしてる! 意外過ぎる展開なんだけど、方向性を定められたくないという意思表示なのかもしれないですね。EDM曲として評価すると、何というかもう少しカタルシスを得られる構成の方が・・・と思ってしまったのだけど。


全12曲収録。驚くべきことにこのアルバム、全米チャート初登場1位を記録しています。ベイビーフェイスを担ぎ出し、90年代R&Bを意識しつつも、現代的なサウンドへ目配せしつつ・・・というバランスの取れたアルバム展開で、よくプロデュースされているなと思います。彼女日本でもヒットするんじゃないでしょうかね。

ただ、刺というかクセみたいなのがあまりないんですよね。5オクターヴは魅力ではあるけど、それだけで売れるほど甘くはないわけです(逆にリアーナなんて音域狭くてもあんだけヒットしてるんだから)。そう考えると、アーティストとしての魅力をこれからどうやって深めていくのか、そこら辺が彼女にとって今後の課題なのではないかと思います。


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