2016年8月4日木曜日

Sia『This Is Acting』(2016)

どうも、こんばんは。何かのうっぷんを晴らすように急にブログを書き始めました。他意はありません。読書疲れで休憩したかったのですw

さて、今回はシーアの最新作です。通算7枚目となる本作ですが、前作ほど注目度は高くなく、1月にリリース(リアーナとかぶってますね)されたはいいがいつの間にフェイドアウトしていた、というほどのものでした。

ところが、ここ最近になってチャート再上昇、6位まで浮上しています。というのも、本作からのシングルのリミックスとなるショーン・ポールをフィーチャーした「Cheap Thrills」がなんと彼女にとって初となる全米1位を記録したからです。このシングル自体じわじわチャートアップした曲ではありますが、確かに夏の暑い季節にぴったりのレゲエ調のナンバーで、時機を得たものと思います。

ところでこの作品、顔出しNGの感じ含め前作の作風を踏襲しているものの、コンセプトととして特筆すべきが「他アーティストへ提供予定だった楽曲の横取り」という売れっ子ソングライターでしかなしえない発想があること。前述のナンバーワンソングも実はリアーナ用に作られたものでした(テイスト的に納得)。それ以外にもいろいろなアーティストへの提供を意図しており(実は拒否されたといえる楽曲だけど)、その痕跡がライティングクレジットとして残っているものもあり興味深いです。とは言いつつ、ふたを開けてみればどれもこれもシーアでしか表現しえない世界観の楽曲群ではあるのですか。

ということでさっそく内容を見ていくことにしましょう。前作と同様、プロデュースにグレッグ・カースティンが関わっているほか、ジェシー・シャトキンも大きく関与しています。

Britney Spears『Britney Jean』(2013)

以前、深夜のテレビ番組を見ていたとき、マツコ・デラックスが意味深なことを述べていました。それは、この世代だからわかるよさがあるということで、そこでブリトニー・スピアーズのよさはいまの若者にはわからないだろうというような話をしていました。

それを観て、わたしは確かにブリちゃんってティーンエイジャーのときからずっとお騒がせアイドルだけど気付けばもう30台だし、若い人にはピンとこないよなあと思いました。そして、とは言いつつ実はまだ34歳という若さでもあるし、だからといってまたブリトニーが日本のワイドショーを賑わせることもないだろうし、などと時代の流れを感じるのでした。しかし、気付けばその呼び方を含め、わたしがアメリカのエンタメ業界に疎かった時代からすでにブリトニー・スピアーズという存在がある種の特別なものとして存在していたのも事実だと思います。

さて、そんなブリトニーですが今月末にニュー・アルバム『Glory』のリリースを発表しました。いったいどんなアルバムなのか楽しみですが、今日はそのことを記念して前作の『Britney Jean』を取り上げてみたいと思います。

振り返ればこのアルバム、自身のミドルネームを冠たパーソナルなものであるのみならず、これまでずっと所属していたジャイヴレコードが解体してRCAへ移籍してからの初アルバムでもあります。そして彼女にしては残念なほどヒットしなかった作品でもありました。ある意味、凋落の始まりとなる作品かもしれず、その意味で次作がどれだけヒットするか注目であると言えます。個人的にこの作品の評価を決めてかねている部分があり、ここで取り上げてみたいと思います。

では、さっそく見ていくことにしましょう。

2016年8月3日水曜日

Rihanna『Anti』(2016)

今日はリアーナの新作を取り上げたいと思います。

新作といってもリリースされたのは1月。すでに半年以上過ぎています。にもかかわらず、ビルボードのチャートではいまなおトップ10圏内を維持しています。つまりロングヒットしているわけです。いままでもシングルを何作もチャートに送り出し、つねにヒットしているような状況を生み出してきた驚異的なアーティストではありますが、どちらかといえばシングル主体の印象が強いだけにこのアルバムがこうしてヒットを続けているということも、このいまの時代状況を踏まえると素晴らしいことだと言えるでしょう。

さて、このリアーナですが、前作『Unapologetic』から動きを見てみるとようやくイレギュラーな動きを示し変化を見せてきました。というのも、リアーナといえばデビュー以来1年に1枚のハイペースでアルバムをこれまで7枚リリースし続け、そこからあまたのシングルヒットを生み出してきてのみならず、サウンド的にもトレンドセッターとしての役割を果たして来ました。しかし、あまりに「無休」感が強いため、いつまでこのペースを続けるのか、一方でそのハードワークっぷりを懸念する声もあったわけです。だから、ここに来てようやく…ということからもしれませんが、そうであるがゆえに、そのブランクからどう戻るのかというのもまた心配材料だったわけです。

実際どうだったかというと、まず自主レーベル「Westbury Road」の立ち上げとデフ・ジャムからロック・ネイションへの移籍という出来事がありました。あれだけヒットを量産してきただけにさすがに契約をめぐるトラブルがあったとは思えませんが、この手の出来事があると大概は軌道に乗るまで時間がかかるものです。しかし、これにより彼女により制作上の優位性が与えられたといえるでしょう。

次にいまやどういう位置づけかはわかりませんが、2015年には今作に未収録の3枚のシングル(「FourFiveSeconds」「Bitch Better Have My Money」「American Oxygen」)のリリースがありました。特にポール・マッカートニー、カニエ・ウエストとのサプライズ共演をはたした「FourFiveSeconds」はこれまでと違うのどかすぎるフォークポップな作風で驚きでした。チャートでもそれなりにヒットを飛ばしアルバムの布石かと思われましたが、結局見送られてしまいました。それ以外のシングルも強烈なビジュアルもありインパクト大でしたが、あまりヒットせずアルバムのリリースが危ぶまれる結果となりました。

しかし、そんなことを気にしたのかどうかわかりませんが、今年に入ってから以前より噂のあったニューアルバムのリリース話が急に現実のものになります。しかも、そのリリース形態がまたいまどきで、Tidalを通じて無料ダウンロード(サムスンが事前に購入して配ったという形)が急に可能になったか思えば他サービスでも購入可能になり、そして少し遅れてCDがリリースされるという変則的な形となりました。しかし、そのおかげでチャートには十分にそのインパクトが反映されず、いったいどれだけの人にこのアルバムが行き渡ったのかあやふやになってしまいました。しかし、ビルボード上でもチャート上位にあらわれ浮き沈みを繰り返しながらいまに至っています。

今作で特徴的なのはそのアートワークやタイトルもですが、なんといっても多彩なプロデューサーらと仕事をしながら、全曲においてリアーナがソングライターとして名を連ねていることです。いままで以上に彼女のアーティストとして個性が反映された作品といえるかと思います。

ということで内容をさっそく見ていくことにしましょう。

Fantasia『The Defenition of…』(2016)

気付けば8月ですね。暑いのでさわやかな曲やパーティー気分の曲を聴きたいところですが今日取り上げるのはファンテイジアの5枚目となる最新作です。事前リリースされた楽曲を聞いたことがある人ならわかると思いますが、はっきり言って今回も濃い~ソウルです(笑)

前作『Side Effects of You』からの動きを振り返っておきましょう。まず、ブロードウェイのミュージカル『After Midnight』への出演がありました。歌手としてのみならず活躍の幅を広げていると言えそうです。また、2014年のグラミー賞において3部門でのノミネートがあり、R&B系アーティストとして着実に評価を獲得していることが確認されました。よろこばしいことです。そして、デビューからのディスコグラフィを見ればわかるように、3年ごとにコンスタントに新作リリースを続けています。そして、今作もRCA/19からのメジャーでのリリースとなります。

しかし、一方で前作の主軸だったハーモニー・サミュエルズは不参加で、代わりに指揮をとったのがなんとロン・フェア。当ブログ的には、レディー・ガガ、メアリーJ.ブライジやキーシャ・コールらのプロデューサーとして注目ですが、噂レベルでは最近ではTLCの最終作にも参加するといわれています。A&Rとしての実績が強く、それほどサウンド的に特徴があるわけではありませんが、逆に堅実なベテランともいえるでしょう。

意外といえば、R.ケリーの参加というトピックがありました。2014年の末にファンテイジアとレコーディングする写真がSNSにポストされ、果たしてどちらのアルバムに入るのかと思われましたが、今作にその成果が無事収録されることになりました。ただし、今回はよくあるデュエット形式ではないようです。

ということで、アートワークも相変わらず強烈な今作、さっそく見ていくことにしましょう。


2016年7月15日金曜日

Maxwell『blackSUMMERS'night』(2016)

本日はマックスウェルの新作を取り上げます。何というか、久しぶりに聞いていて心がウキウキしたアルバムだったので、何か書いてみたいと思います。

それにしても話は変わりますが、ストリーミングサービスというのはそれなりに罪深いものでもあります。わたしは、この作品が出る日(つまり7月1日)を楽しみにしていたのですが、当然、作品はCDで買うつもりでいました。ところがGoogle Playを開くと、発売と同時にこの作品が公開されているではありませんか。そして、再生したいという欲望を抑えることができませんでした。

言うまでもなく素晴らしい内容であります。そして、ここで二つの選択肢が現れることになります。改めてお金を出してCDを買うのか(ダウンロードという手もある)、このままストリーミングで良しとするのか。

それなりに迷いましたが、結果的にアルバムは購入することにしました。お値段の問題もありましたが(HMVでまとめ買いしたら1200円ぐらいだった)、このブログで取り上げる以上、作品は手持ちでありたいというささやかな意地もありました。

しかし、ここ最近を振り返ると、そこまでして作品をCDという形で所有しておきたいと思える作品って少なくなったなあと、その状況自体になんだか切ないものを感じてしまいます。CD以外の選択肢が増えた必然的帰結であるとともに、「じゃあ、そもそも音楽を体験することってどういうことなの?」という哲学的な問いへとふと誘われてしまいますね。わたしは、少なくともパッケージにに触れること、封を開けること(US輸入盤特有のシール剥がしも)、ディスクをプレイヤーに挿入すること、ブックレットに直に触れることといったことは、決して音楽体験において聞くことと無関係なものとは思えず、買わなきゃわからなかったことというのがあるのだと信じます。

さて、今年のR&B業界ですが、トラップ系R&Bの定着とベテランの復調というのが、おぼろげながら感じることです。特に後者ですが、アンソニー・ハミルトン、タンク、ブラマク、ミュージック・ソウルチャイルド、ジャヒームなどおっさん系アーティストが手堅い作品を発表しているのが印象的で、このマックスウェルもその系譜に並ぶかもしれません。もうすぐキース・スウェットという超大御所の新作もリリースされますしね。もちろん、プリンスというレジェンドの死という出来事も忘れることはできません。

そんな中、やっと本題ではありますが、このマックスウェル、前作から7年というブランクを得てようやくの新作リリースとなりました。思えばその前作『BLACKsumeers'night』も8年ぶりというブランクものであったのですが、90年代ネオ・ソウルとして一括されるようなある種の音楽的潮流にいた人たちのマイペースっぷりというのは、また一つの現象のように思えるから不思議です(その極め付けがもちろんディアンジェロではあるのですが)。このマックスウェルも前作が3連作であると予告されていたことから、次作リリースは近いのかと思いきや、結果的にこれだけの月日が経ち、気づけば本人も43歳とガチでおっさん年齢になってしまっていました(ジャケ写観てるとずっとおっさんな感じがするけどw)。自作自演系の人であるだけに、良く言えば作品に対して一切妥協しないというポリシーの産物かもしれませんが、寡作過ぎるというのはなんだか寂しい気もしてしまいます。ちなみに96年デビューですが、この20年目にしてようやく5作目となります。

ここで、このアルバムの発売までの動きを少し振り返ると、2014年ころに雑誌のインタビューに答え、そこで現在次作を製作中であることを明かします。その後、SNSで2015年冬頃に新作をリリースする意向を明らかにするも発売に至らず。ようやく今年の4月になって6年ぶりとなる新曲を発売。そこからアルバムのリリースが確定しいまに至ります。

では、アルバムの中身を見ていくことしましょう。これまで同様、全曲マックスウェルのプロデュース(Musze名義)、加えて前作に続いてホッド・デビッド、デビューから付き合いであるスチュアート・マシューマンが共同制作者に名を連ねています。